活用事例

群馬大学

国立大学法人 群馬大学 数理データ科学教育研究センターでは、データサイエンス教育に学認クラウドオンデマンド構築サービスを活用しています。その概要と成果について、群馬大学 数理データ科学教育研究センター センター長 浅尾 高行氏、同 教授 松浦 勉氏、同 准教授 井上 仁氏にお話を伺いました。(インタビュー実施:2021年11月1日)

まず、数理データ科学教育研究センターを設置された背景をお聞かせ下さい。

国立大学法人 群馬大学
数理データ科学教育研究センター
センター長 浅尾 高行氏

浅尾氏:来るべきスマート社会の実現に向けて、日本でもAI/IoTやビッグデータ解析などの先端技術を駆使できる人材が強く求められています。また政府においても、全国約50万人と言われる大学生に対し、データサイエンスやデータ利活用に関する教育を強化する施策が進められています。しかしその一方で、この分野における日本の取り組みは、欧米の先進諸国から大きく遅れているとの指摘もあります。こうした状況を挽回していくためには、体系化されたデータサイエンス教育をしっかりと提供できる組織が必要です。そこで本学でも、データサイエンス教育の推進役となる当センターを平成29年に設置。現在では、文科省が進める「大学の数理・データサイエンス教育強化」の協力校にも指定されています。

群馬大学 数理データ科学教育研究センター

群馬大学では、全学生に対してデータサイエンス教育の必修化を行われています。その狙いについても伺えますか。

国立大学法人 群馬大学
数理データ科学教育研究センター
教授 松浦 勉氏

松浦氏:日本がこの分野で周回遅れになってしまった原因の一つに、応用数学を軽視する風潮があったように思います。もちろん、これまでも統計学やデータ分析などに関する教育は行われてきました、しかし、経済学部なら経済、医学部なら医学と、それぞれの専門分野に閉じた形で進められており、全体として統制の取れた形にはなっていなかった。きっちりとした統計学の学位があり、博士課程に進む学生も数多く存在する欧米の教育システムと比較すると実に対照的です。これ以上諸外国に後れを取らないためには、理系/文系の別を問わず、全学生にデータサイエンスについて学んでもらうことが必要です。そこでリテラシーレベルの教育を必修化すると同時に、専門家を目指す学生に対してはより高度な内容のカリキュラムも提供しています。

具体的にはどのような内容の教育を行われているのですか。

松浦氏:まず、全学必修の基礎科目として、学部1年の前期に「データサイエンス」という科目を開講しています。2020年度から始まったこの科目は、文科省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシー)」の認定も受けています。さらに、2021年度後期からは、「データサイエンス応用」「データサイエンス・AI・機械学習」の2科目を新たに開講。その他にも、プログラミングを学ぶ「Python入門」など、様々な科目を設けています。

Python入門の開講にあたっては、「学認クラウドオンデマンド構築サービス」を利用されました。これはどういう経緯からだったのでしょうか。

国立大学法人 群馬大学
数理データ科学教育研究センター
准教授 井上 仁氏

井上氏:PythonはAIや機械学習などの分野で広く利用されている言語であり、ライブラリなども豊富に用意されています。これを学ぶことは、学生にとっても非常に有用です。ただし、その教育プラットフォームを構築する上では、様々なことを考慮する必要に迫られました。当時はまだPC必携化が実施されておらず、学内のPC教室を使うことが前提でした。これだと人数が限られる上に、大学の環境と学生が自宅で使う環境に差が出てしまう可能性もあります。Pythonの中身そのものよりも、その前段の操作方法などでつまずくようでは困ってしまいます。
 そんな時に、学認クラウドオンデマンド構築サービスで「CoursewareHub」が使えることを知りました。CoursewareHubは「JupyterNotebook」がベースですが、元々本学でもJupyterNotebookを本教育プラットフォームの基盤として有望視していました。さらに、CoursewareHubでは、教材配布やレポート回収などの機能が拡張されている上に、学生の学習進捗状況なども把握できます。このように全員が統一的な環境で学習を進められる点、その他にも様々なメリットがある点などを評価して、学認クラウドオンデマンド構築サービスの利用を決めました。

CoursewareHubとは

実際に導入してみた感想をお聞かせ下さい。

井上氏:正直なところ、最初の頃はうまくいかず悩んだこともありました(苦笑)。学認クラウドオンデマンド構築サービスは、様々なクラウドサービスに対応できるように作られていますが、本学では諸般の事情でオンプレミス構築を選んだため、想定とは異なる動きをするケースがあったのです。
 しかし、何度かトライするうちに、段々とコツも掴めてきました。環境構築のためのNotebookも分かりやすく、設定する値や処理がどういう意味を持つのかもきちんと説明されています。ゼロからのスタートだと壁に突き当たることも多いと思いますが、様々な選択肢があらかじめ用意されているおかげでとりあえず先に進むこともできます。NII側でも丁寧にサポートしてくれましたので、最終的には導入して良かったと感じました。

CoursewareHub環境の構築

講義への反応はいかがでしょうか。

井上氏:おかげさまで大変好評です。本年度は昨年と同じく定員120名としましたが、履修希望が170名近くに上ったため、急遽枠を拡げたほどです。学生のSNSなどでも「Python面白い!」といった書き込みが見受けられますので、それなりに成果はあったのではと感じています。ちなみに、この170名という数は、一年生全体の約1/6にあたります。こうした点からも、この分野に対する学生の関心の高さが伺えます。

松浦氏:従来型の教育では、板書を一生懸命ノートに写して自宅で復習するスタイルが一般的でした。しかし、こうしたやり方では、なかなかプログラミングの能力は身に付きません。実際にプログラムを作成したり、動かしたりしてみないことには、どこで間違えたのかも理解できませんからね。そうした面でも、今回のようなe-Learning教材の持つ意義は大きいと思います。

教材の例

最後に今後の展開についても伺えますか。

浅尾氏:大学における学びのあり方も、時代に合わせて変えていく必要があります。今回導入した学習環境も、まさにそうした取り組みの一つと言えます。これをさらに加速させていくと同時に、小中高等学校や社会人向けの公開講座など、大学の外へも拡げていきたい。特に本学では、データサイエンス関連の教材をどんどん作成して発信していきたいと考えています。しかし、県内の他大学などでは、サーバーやLMSなどの環境が十分に整っていないケースも多い。こうしたところに対しては、インフラレベルからの支援が必要です。データサイエンスをもっと世に広めていくためにも、NII並びに学認クラウドのサービスには大きな期待を寄せています。

ありがとうございました。

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